第36話
「最高のクリスマス」

ジョージアは気候が温暖なので滅多に雪は降らないが、コロラドは山なので雪深いはずと決め込んでいた僕は、デンバーの空港に降り立って、雪ひとつない天気に面食らった。物凄く天気が良かった。ホストファミリーのビルとダイアンはTシャツだった!4ヶ月振りの再会に僕は喜んでいた。家の中に入った瞬間、懐かしい匂いに思わずこみあげてくるものがあった。たったの4ヶ月前なのに、あの夏がとてつもなく愛おしく、懐かしかった。でも違うのは・・・マサもマホリもヨシヒデもいないことだった。2人1組になってホームステイをした3週間。僕のホストの親戚一家、3つのファミリーがそれぞれホストファミリーになっていて、ビルの妹宅にはマサとマホリ、ビルの母親宅にはタイシとカズヨシがステイしていて、毎日、僕の家(というかビルの家)に皆が集まっていた。どこに行くにも、この3家族は一緒だったので、毎日賑やかでとにかく楽しい日々だった。僕はあの夏をしきりに思い出していた。

今日はクリスマスということで、例の如く、3家族の家を回り、それぞれの家で沢山の食べ物を食べた。僕は10ドル分のCDギフト券を貰った。僕としては久しぶりの再会!という面持ちだったのだが、皆は極々普通に「Hi, Ko!」と言った。この4ヶ月の間に、いろいろと変わっていた。ビルは髪が伸びた。ダイアンはパーマをかけた。家の中は前よりも綺麗になった。ビルの甥っ子、エリックも髪が伸びた。学校で日本語の授業をとっていることもあり、日本語の発音が上手い。相変わらずいたずらっ子。ビルの姪っ子、ハイディやニッキーは相変わらずだった。ビルの息子、ローゲン(4歳)とテナー(2歳)は相変わらず可愛い!そして大好きな大きな大きな犬、セイディも!好きな場所で、楽しい人たちと最高に楽しいクリスマスを過ごせて僕は幸せだった。

翌日(26日)はビルの妹宅でビデオを観たりして、のんびりと過ごし、夜、デンバーに留学している同級生カナコがやってきた!カナコの友達(ベトナム人たち)が車を運転して、ベトナム人が経営するカラオケ屋に行った。勿論、ベトナムの歌がほとんどだったので、僕とカナコはビートルズの「Ticket to ride」を歌った以外は、ずっと2人で喋りまくっていた。頼んだグレープフレーツジュースが、なぜか、ぬるまっこくて笑えた。店内は物凄いタバコの臭いで、服はかなり臭くなってしまった。夜遅く帰宅したのだが、「タバコを吸ってるんじゃないか」とビルたちに疑われたらどうしよう!なんて僕は気が気でなかった。

27日は、朝9時にカナコと、もう一人の同級生ミチヨと待ち合わせ。CDなどを買い、シズラー(ファミレス)でランチ。パンクしそうなほど食べ、狂ったように笑い、苦しくてどうなることかと思った!その夜はミチヨ宅に泊まり、3人で喋りまくった。歯ブラシを忘れてきたことに気付き、ミチヨのホストファミリーに余りものはないかと訊ねたら、通販をやっているホストマザーが「歯ブラシなら売ってあげるわ!」と言い、しっかり95セント請求された。僕は1ドルを支払い、「お釣りは要らない」と言ったのだが、翌朝、僕の寝室に5セントのお釣りと、領収書が置かれていて苦笑した。ベリンダのいい加減さと、ここのホストの細かさを足して2で割ったようなホストファミリーが理想的だ。それはビルとダイアンだと思った。

この日、買い物をしている時にミチヨにホストファミリーのことで悩んでいることを打ち明けた。すると、ミチヨは「それはあまりいいホストとは言えないなぁ」と言い、僕はドキッとした。悩んでいるとはいえ、二度もホストを変えたくないと思ったし、自分ではいいホストであると思い込もうとしていたのだ。でも、人が第三者の目で見て「いいホストではない」と言うのを聞くと、自分で思っているよりも良い状況ではないということだろうか、と気が重くなるような感じがした。

第37話へ



留学記目次