第72話
身勝手

4月26日(月)。G市との交流会は始まったばかりだが、僕はモントノワでの3日間の疲れがとれず、朝は寝坊。Tさん(日本人学生仲間のリーダー)からの電話で飛び起きた。まずはブザンソンにあるカミュ中学校の見学。午後は城塞へ。わたくし、おばさんパワーに圧倒される。G市からのメンバーの中には、とてもユニークな人もいる。シャンソン好きが講じて、これまでに5回程渡仏経験があり、しかも1ヶ月間のフランス語研修も受けたことがあるとか。また、モントノワで一緒にホームステイをした中学生Kの伯父さんであるUさんは、とてもダンディーで親しみやすい紳士だった。まぁしかし、あれだけの団体となれば、いい人ばかりとは限らず、何かと規律を乱そうとする人もいる。
「木曜日のパリ行きなんだけどね、私たちバスじゃなくてTGV(新幹線)で行きたいのよ。出来るかしら。あ、事後報告でもいいわね」
何それ・・・。団体行動をするのに「事後報告」とはいかに?

夜はレセプションだったのだが、プランの変更に関して、ブザンソンの仏日協会側と話し合わなければならなくなったのだが、思いもかけず「あなたが決めてくれる?」と言われて唖然。我らはただのボランティア通訳。あなたたちの会なのに、なんであなたが決めないの?と思った。まったくもう、あっちもこっちも身勝手である。疲れが増す。

4月27日(火)。ブザンソンからバスで1時間程のところにあるナンクレーという小さな村へ。昔の家が残っていて、そこで当時と同じように壁作り、糸作り、そしてパン作りを体験する。それにしても、ブザンソンから少し離れただけで、フランシュ・コンテ地方の美しい風景が広がり、感激の一言である。疲れも癒される。

夕飯の中華は量が足りず。その後のコンサートは迫力ナシでつまらなかった。

4月28日(水)。ボランティア通訳は中休み。学校に行って試験を受けた。体調はあまり良くなく、だるくて頭が痛い。試験もイマイチだった。

4月29日(木)。今日からパリ。6時10分集合だというのに6時20分に起きる。かなり焦りながら身支度しているところに、リーダーのTさんから電話が来て、家まで車で来てくれるという。何とか間に合ったが、慌てて支度をした為、社会の窓が開いていた。ブザンソンからパリまで半日かけてバスで行く。ボランティア通訳メンバーは後部座席に座り、楽しく盛り上がった。

まずはヴェルサイユ宮殿へ。プロの日本人観光ガイドによる説明付きなので、かなり興味深く見学した。観光名所をこんなにも興味を持って見学したのは初めてかも知れない。そして初めてフランスの歴史に興味が湧いた。

宿は高速沿いにある簡易ホテル「Fomule 1」。それにしても、どれだけの節約旅行なのだろう・・・。G市メンバーはフランスに来るにも、パリへの直行便ではなく20時間以上もかけてスイス経由でやって来た。ブザンソンではホームステイ。ブザンソンからパリへ行くのもTGVが普通なのにバスを使い、宿は安い簡易ホテル。聞くところによると、参加者は相当な額を払っているらしいが・・・。

ホテルで夕飯を摂り、その後皆で部屋に集まり夜中の4時まで飲んでいた。楽しいひととき。明日、大波乱が起きることも知らずして・・・。

第73話につづく

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