第66話
エクス・アン・プロヴァンスに感激!

4月7日(水)。今日はマルセイユからバスで程近いエクス・アン・プロヴァンスの観光。先月、ロータリー財団奨学生が集ったシャンパーニュ旅行で知り合ったアメリカ人のネイサンと夕方会うことにもなっていた(蛇足だが“姉さん”ではない。Nathanという男性名の英語読みである。フランス語読みするとナタン)。

田舎町だと思っていたら意外にもそこそこ開けていて、それどころか、なんといっても美しい町!!!マルセイユから来たからそう思ったのではない。かのセザンヌが生まれ、愛した町だけあって、調和のとれた街並みが美しい。それに、至るところにある噴水が、街全体の瑞々しさを引き立たせていて心地が良い。ブザンソンではなくエクス・アン・プロヴァンスに留学すれば良かったと心底思った程だ。

随分と髪が伸びていたので、通りかかった美容院に入って髪を切った。今迄で一番短く切ったかも知れない。ボサボサから短髪に変身した僕を見て、イワデレとポン子は目を丸くした。清々しい気持ちで歩くエクス・アン・プロヴァンスの町は、また格別に美しく見えた。ふと見ると、おじさんに連れられて散歩しているゴールデン・レトリバーを発見。
「か、か、か、くぁわいい・・・」
目で追う。後を追う。カメラを取り出す。少し離れた距離に居たので、おじさんの許可なく、カメラのシャッターを切った。すると、熱い視線に気付いたのか、おじさんはポケットからインスタント・カメラを取り出し、なんと僕に向かってシャッターを切った!写真の撮り返しをされたわけだ!しかし、僕を撮ってどうする気だろう?

それにしても風が強い1日だ。コンタクト・レンズをしているポン子はしょっちゅう目を押さえて痛がっている。かと思いきや、ボケーッと歩いていたのか、壁に頭をぶつけてよろめいていた。(ポン子らしくて、僕は大笑いしてしまったのだが・・・)

夕方になり、ネイサンとの待ち合わせ場所に向かった。15分遅れでやって来たネイサンは、フレンチとスパニッシュが混じったレストランへ連れて行ってくれた。僕がしきりに「エクス・アン・プロヴァンスはすっごく綺麗な町、住みたい、気に入った」と感激の程を繰り返すと、彼も「いい町だ」と言った。ちなみに、日本人とアメリカ人が多いらしい。・・・やはり。更には、アメリカ人向けアメリカ人専用の学校もあるのだとか。あれま。ストラスブールと同じだ。

彼はもうすぐカンボジアに旅に出るそうだ。小さい頃に住んでいたのだとか。アジア人の僕よりも、彼の方がアジアには詳しいのかも知れない。

10時半のバスでマルセイユに戻り、不良が集まる(=オヤジ・バーのようなまったりとしたバーではない)バーを探したが見付からず、結局昨日と同じオヤジ・バーに入った。若い世代が飲む雰囲気ではないので、まったりとした空間。でも妙に落ち着く・・・。

夜もかなり更けてからホテルに帰った。門のドアは既に鍵がかかっていた。(門限を過ぎた場合は呼び鈴を鳴らすと開けてくれるが、一瞬、焦った)


第67話につづく

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