第39話
スイス最終日にピンチ!

12月24日(木)。ようやくフランスに戻る日を迎えた。“ようやく”と言うくらいなら、早く帰ればいいものを・・・。とはいえ、せっかく来たのだから早く帰るのは勿体無いと思い、予定通りの旅程を貫いた。

午前中のうちにローザンヌを発ちジュネーヴへ。電車は3時なので、時間を潰さなくてはならないが、特にすることもない。サンドイッチを2つ買ったら、スイス・フランは手元に20サンチーム(約20円)しか残らなかった。それしか残らないのであればフランス・フランに再度換金する必要もなく、綺麗なお金の遣い方だったが、しかしたったの20円ではどの店にも入れない。時間を潰さなくてはならないのだ。そこで僕はバーガーキングに入り、何も注文せず席に着いた。待ち合わせをしているフリをすれば大丈夫だろうとタカをくくったのだ。が、程なくして店員がやって来て「注文はしましたか?」と訊かれてしまった。見抜かれていたようだ。
「あ、いや、友達を待ってるんですけど・・・これから注文するところです」
と嘘をつき、慌てて店を出た。

まったくツイてない。現金20円。ならばクレジット・カードで支払いの出来る店に入ろうと思ったのだが、どの店もカード払いの場合は数千円からと相場が決まっていて、ドリンク1杯をカード払いさせてくれるところが見付からない。それでもめげずに探している時・・・ふと嫌な視線を感じた。そういえば、バーガーキングを出たあたりから中年男に尾行されているような気はしたのだが、気のせいだと思っていた。事実、その人は途中で違う道に行ったのだから。でも、横断歩道を渡る時、その人とすれ違い、更にはしっかりと目も合い、怪しく会釈までされた。僕がレストラン探しをしている間中、ずっと付いて来ている・・・?!何度もすれ違う。一体何なのだ!?僕は早足で、わざと後ろを気にしながらあてもなく歩いた。

やっと男の気配がしなくなった辺りで、カフェがあったので入り、幾らからカード払いが出来るのか訊いた。すると、これまで散々断られていたにも関わらず、この店は幾らからでもカードが使えるという。やっと見付かった・・・。果たして僕は、3.8フラン(約380円)のコーラ1杯だけで2時間居座った。読書をしたり、手紙を書いたりして時間を潰し、たった380円の支払いをカードで済ませ、駅に向かった。

これといって大きなトラブルはなかったが、なんだかツイてないスイス旅行。寒い、高い、英語。シーズンオフ。次に来るとしたら夏がいいだろうな。

夕方、ブザンソンに着いた時はとにかくホッとした。スイスほど寒くはないし、物価もスイスより安く、スイス・フランではなくてフランス・フランを遣えるし、そして何より英語で話されることが全くない。フランス語で話せば100%フランス語で返ってくる。

フランスに戻って来たというささやかな幸せを噛み締めつつ、夕飯には焼そば(しかし具はなし)、白いご飯、そして味噌汁を、不在中に届いていた友人たちからの4通の手紙を読みながら、幸せ一杯に食べた。

第40話につづく

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