素晴らしき想い出


2011年7月7日(木)

ホテルの裏側は打って変わって住宅地

<回想>
旅に出たら、たとえその地を再び訪れることが二度とないにしても、「いつかまた来たいな」と思わせてくれる“何か”を見つけたい。それは意外と、そう簡単なことではないかも知れない。その町(国)との相性もあるし、自分自身の体調や調子の問題もある。ただ、その“何か”というのは極々シンプルで単純なきっかけだ。一緒に旅した相手との楽しい交歓、新しい出会い、心を惹き付ける名所や物、そして風景が、その“何か”になり、いつまでも楽しい思い出として心に刻まれる。逆に、たまたまイヤな思いをしたことによって、その町(国)、はたまたその旅行自体が苦い思い出となり、「もう二度と行きたくない」とインプットされることもあるだろう。


僕は長い間、東南アジアを避けていた。厳密に言えば、食べ物と衛生面の観点から、欧米の先進国以外への旅行は全く以て気が進まなかった。でも次第に感激が薄れていることに気付いた。勿論欧米と一言で言っても、国によっても地域によっても文化の違いはあれど、全てが整っている先進国はどこに行っても“おんなじ”という感覚が拭えなくなった。何を見ても、以前のような驚きやトキメキがない。そもそも観光名所にあまり関心がなくなった。いわば、旅に求めるものが変わったのだ。今はダイビングありきだ。

去年仕事でシンガポールに行ったことが、雪解けのきっかけだった。シンガポールは、思っていたよりも東南アジアっぽくなくて、思っていたよりも東南アジアっぽかった。久しぶりに異国でワクワクする感覚があった。もしかしたら、他の東南アジアの国も大丈夫かも知れない。チャレンジしてみたい。じゃあまずは、ダイビングも出来てリゾート地として人気のプーケットから行ってみよう、と決めた。


海外旅行の醍醐味は“違い”を楽しむこと。プーケットに着いてすぐに僕の想いは満たされた。ただ、最初の方は、喧騒の町パトンから出ることがなかったので、「ここに来て凄く良かったけれど、もう一度来たい程ではない」と思っていた。それが一変したのが、タクシー・ドライバーのヨーさんと過ごした、たった2時間のドライブだった。プーケットは喧騒の島ではなく、あんなにも穏やかで人間っぽくて、ゆったりとした時間が流れているところ。コロニアル建築の佇まいが美しいプーケット・タウンのあたたかさ。そして、ヨーさんの人柄。あの時プーケット・タウンに行こうと思わなかったら、他のドライバーに当たっていたら、夕暮れ時という一番優しい時間帯でなかったら・・・様々な偶然が絶妙に重なり合って、揺らぐことのない“心に熱く刻まれる思い出”となる。あの2時間がなかったら、プーケットはただ単に、綺麗な海でダイビングをした場所、というだけの記憶に留まっていたことだろう。


他にもラッキーなことはあった。現在は雨季でローシーズン。ゆえに混雑もせず安上がりで済むが、雨に降られたらせっかくの綺麗な海でのダイビングも、ちょっとどんよりした感じになってしまう。それが今回は一度も雨に降られず、インストラクターも感心しながら「雨季とは思えないくらいです。一度も雨に降られず、風もないし、今回は本当にラッキーですよ!」と言っていた程だ。


それから!帰りのフライトのチェックインをした際、「席は窓際ではなくて、通路側にして下さい」とリクエストしてOKと言われたにも関わらず、プーケット→バンコク間の飛行機はなぜか窓際。もしかしてバンコク→羽田も窓際か?と憤慨気味になり、バンコクの空港で座席を再度確認したら、今回はちゃんと通路側になっていたので一安心。飛行機に乗り込むと、行きの飛行機よりも新しく、座席も随分ゆったりしており、足をよく伸ばせるのも新しい機体だからだと思っていた。それにしても椅子も機能的だなぁ、新しい機体だからか!と解釈していた。しかし実は、僕が座った席というのは、エコノミーとビジネスクラスの中間である“プレミアム・エコノミー”だったのだ!!近くに座っていたオジサンたちが「ちょっとお金を足しただけあって、いい席だねぇ」と言い合った後、CAにも「この席は、エコノミーではないの?」と質問し、「プレミアム・エコノミーです」と回答を得ていた。それを僕はずっと耳をダンボにしながら盗み聞きして知ったわけだ!エコノミーが一杯だったからかな?!いやぁ〜なんの因果か、なんたる幸運!!


7月7日(木)、午後10時45分、無事羽田空港に到着。

旅疲れはなく、逆に心は晴れ晴れ。これこそが、本当の意味で“思う存分満喫した旅”だと言える。思い切って旅に出て正解だった。ただ今回食事にはめっぽう恵まれなかった。だがそれも良し。日焼け止めを塗ったのに、しっかり日焼けもした。それも良し。もうひとつの副産物は蚊に刺された手足。かゆい。

INDEX
1日目 初・タイ入国!
2日目 喧騒の街で
3日目 穏やかな時の流れ
4日目 碧い海でダイビング
5日目 素晴らしき想い出