穏やかな時の流れ


2011年7月5日(火)

<いよいよダイビング実習開始>
午前中はダイビング用のプールで実習。これまたパトンにあるので、他の町への移動なし。そして午後、ようやく海洋実習(ダイビング2本)となり、やっと海で遊べる!と心躍らせたが、内容を聞くと、実際のところ体験ダイビングよりも時間は短く(各20分)、しかもスキルの実践。よくよく考えたらそうだった・・・今回はライセンス取得コースであって、学んだことを実際に海で実習をする、いわば遊びではなかったのだった・・・。内容としては、ダイビング中に不測事態が起きた時の為のスキル実習。海の中でマスクが外れた場合、口に咥えているレギュレーターが外れた場合、はたまたタンクの空気切れが起きた場合、バディー(相手)のタンクの空気切れが起きた場合などなど、パニックにならないようにスキルを身に付ける。

今日行った海は、繁華街から車で10分程行ったところの浜辺から、地元のおじいちゃんが運転するボートに乗って数分のところにある、これまたパトンのエメラルド・ビーチ。残念ながら透明度はイマイチ。明日は遠くの海まで船で行くので、かなり透明度も魚も期待できそうだ!

<ヨーさんとの出会い>
今日のコースが終わったのが夕方4時前。まだ明るい。さすがに3日間も喧騒の町・パトンの中ばかりにいると飽きるし疲れる。遠出がしたい!ああ、プーケット・タウンに行きたい!!観光客だらけの喧騒の町から離れたい!!!じゃあどうやって行く?ダイビングのインストラクターに訊いたら、トゥクトゥク(軽ワンボックスカー)だと相場は片道400バーツ(約千円)だが、交渉次第だと言う。

一旦ホテルに帰ってシャワーを浴び一息ついてから、5時頃、再び街中に出た。適当に交渉しようと歩いていたら程なくして、とあるオッサンに話しかけられた。
「タクシーどう?どこに行くの?」
トゥクトゥクではなく、エアコン付きの乗用車タクシーで、プーケット・タウンまで片道(約20分)350バーツ(約940円)でどうだ?と言う。
「350?300バーツ(約800円)に負けてよ!」
「普通、プーケット・タウンまでは400バーツなんだよ。350バーツって言ってるんだから、既に割引してる」
「300じゃダメ?」
「ダメだよ。昼間なら400が相場。今は夕方になったから割引してるんだ。どう?」
「トゥクトゥクならいくらなの?」
「車もトゥクトゥクも料金は同じだよ」
「・・・300じゃダメ?!」
相場よりもかなり低い金額で粘る僕に、笑うオッサン。さすがに妥協してくれなかった。まぁ、実際相場より安いからいいか!と車に乗り込んだ。車の中で落ち着いて話してみると、凄く穏やかでいい人そう。しかも、年齢を訊いたら、オッサンどころの騒ぎではなく、31歳とのこと!!年下だった・・・。帽子を被っていたのでよく分からなかったが、よくよく顔を見たら確かに若いし、体つきも全然オッサンではなく、年相応のスポーツマンという感じだった。ヨーさんというその運転手は、穏やかな口調で話し、とても親しみやすい人のように思えた。家族や仕事の話などを笑顔で語ってくれた。

本当はプーケット・タウンまで片道だけ送ってもらい、帰りは適当にバイク・タクシーを拾おうと思っていたのだが、本当にいい人だったので、そのまま往復してもらうことにした。実際のところ、彼の話す英語は理解し辛かったが、話は弾んでいた。彼だけでなく、他の、英語が苦手なタイ人も同様なのだが、発音やアクセントの問題だけでなく、タイ語の影響か、彼らは最後の子音を発音しないのだ。ゆえに慣れないと何を言っているのかさっぱり分からないことがある(“最後の子音を発音しない”って、フランス語か!)。

ところで、プーケット・タウンは、中国とポルトガル・スタイルのコロニアル建築の建物が並ぶ異国情緒あふれる界隈。そこで何をしたいというわけではなく、ただこの目で見て、写真を撮りたかっただけ。コロニアル建築が立ち並ぶ通りに着き、ヨーさんは車を停めて待ってくれていた。その間約30分強。「もし道に迷ったりしたら、電話して」
と、ヨーさんが言ってくれたので、僕は安心しながら歩を進めた。

<異国情緒あふれるプーケット・タウン>

パトンと違い、ここは本当に穏やかで気持ちのいい空気が流れている。



少し道を入ると、地元の人たちが集う市場やレストランがあった。




何と言っても建物がカラフルで面白い。この異国情緒が何とも言えない。しかも、太陽が降り注ぐ昼間ではなく、この夕暮れ時の優しい時間に、これらコロニアルの建物がマッチしているように思えて、心が和んだ。やっぱり来て良かった。


<予定外の場所へ>
写真を撮りまくり、満足したところで車に戻った。他に行きたいところもないので、もうパトンに帰ることを告げたら、「エッ?!他に行きたいところないの?」と訊かれた。別にない。が、せっかくだし「オススメのところある?」と訊いたら、ラン・ヒルという丘があり、そこから町を一望出来るというので、連れて行ってもらうことにした。ここでも、彼は車の中で待ってると言っていたのだが、突然気が変わったようで、少し案内してくれた。さほど長居する場所でもないので、15分程度で退散。

プーケット・タウンを一望。ここにはカフェもある。

<幸運でした>
とても心が満ち足りた。喧騒から逃れられたこと、しっとりとした異国情緒に触れられたこと、思いがけず丘に行けたこと。最初に考えていたように、片道だけでこのタクシーを降りていたら出来ないことだった。そして何よりも、たまたま当たったヨーさんが、実にいい人だった。観光客から少しでもお金を巻き上げようという気がなく、純粋な気持ちで接してくれている。この国では常識であるタクシーに乗る前の事前金額交渉を片道分しかしておらず、途中突然プラン変更をして、往復になったし、ましてや車の中で待たせたり、他の場所にも連れて行ってもらって案内までしてもらっているので、結局幾ら支払うことになるのか見当がつかなかった。もし、予想外に高い金額を請求されたとしても、そのまま言い値で払ってもいいと思わせる人だった。

・・・が、しかし、実際にパトンに着いて、料金を訊いたら、700バーツ(約1,800円)でいいと言う。当初の片道料金350バーツをそのまま往復にしただけの金額。エッ!車の中で30分も待たせ、しかも予定外のラン・ヒルまで行って、案内までしてもらってるのに?!プラスアルファを請求してこないの?!申し訳ないと思いつつ、感激した僕は、たまたま持参していたCD「塩水」をあげた。それを見た彼は、
「エッ!!もしかして、君は日本ではスーパースターなの?」
と、僕に訊いてきたので、
「そうだよ」
と答えておいた。 冗談です。「いずれ」と付け加えておいた。

最後に僕は正直な気持ちを伝えた。
「凄くいい時間でした。さっき、あの場所で、あなたに会えて良かったです。・・・あなたは幸運でした」
「エッ?!が?」
「ん?」
ハッ!!ここで僕が言い間違えていたことに気付いた。“あなたに会えて良かったです。僕は幸運でした”と言いたかったのに、“あなたは幸運でした”と、主語をすっかり間違えていた!!
「アーハッハッハッ!言い間違えた・・・“僕が幸運でした”」
笑って、握手をして、別れた。

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INDEX
1日目 初・タイ入国!
2日目 喧騒の街で
3日目 穏やかな時の流れ
4日目 碧い海でダイビング
5日目 素晴らしき想い出