母が上京してきた。「河口湖の桜と3つの美術館をバスで巡るツアー」に参加する為である。去年も開催され、非常に好評だったそうで、今年も予定人数を大幅に上回り、バスも日程も追加された程だそうだ。それに僕も便乗した。

新宿駅からバスで出発するのだが、席に座り、その数秒後には到着していた。説明するまでもないが、口を開けて眠りこけていたのだ。目を覚ますと、辺りは桜で一杯だった。

 
 
 
頭の中はボーッツとしていて、半分寝ていたが、見たことのないような品種の桜もあった。周りが白で、真中が赤い桜。天気も良く、清々しくて、桜もとても綺麗だった。
 

 
またバスに乗り、今度は「中原淳一美術館」へ。昔活躍したデザイナーだそうで、母や年配の方達にとってはとても懐かしい雑誌の絵が飾られていた。当時としては斬新だったのだろうなぁ。

ハーブ館にも立ち寄り、その後昼食会場へ。旅館の宴会場だった。仲居さん達が、「お飲み物はお申し付け下さいませ〜」と言い回っているにも関わらず、80名近いおじさま・おばさま達、誰一人として注文する人はいなかった。・・・飲み物、しかもビールを注文したのは僕達だけであった。料理は、ツミレの鍋、刺身、茶碗蒸(定番)など、そこそこ味も良く、満足出来た。




今日はとにかく天気に恵まれた。きっと日頃の行いがいいからであろう。気温も程々に良い。昨日は暑くて汗ダラダラだったそうだ。始めは富士山のてっぺんが雲に隠れていたけれど、昼になると雲がなくなり、はっきりくっきり富士山を拝められた。本当に美しかった。僕は新幹線からしか富士山を見たことがなかったのだ。

昼食の後は、「久保田一竹美術館」へ。バスの中で、ビデオを流していたらしいが、僕は寝ていた為、何の予備知識もなく鑑賞することになった。着物の染色家らしい。「一竹辻が花」がズラリ。豪華で色鮮やかな着物がそれほど数は多くないものの、優雅に飾られていた。富士山を描いた作品が多かった。

作品の素晴らしさもさることながら、この美術館の建物自体も独特で興味深い。インドの古城に使わていた数種類の扉を組み合わせた正門、新館は琉球石灰岩(サンゴ等の堆積岩)の8本の円柱に支えられた回廊を持つ独創的な建築。いささか南国に迷い込んだかのような佇まいである。そして横を見上げれば富士山。奥の庭には滝がある。これらがすべてマッチしているところに、なんとも言えない風情を感じた。


 
琉球石灰岩(サンゴ等の堆積岩)で出来た新館 インドの古城に使わていた数種類の扉を組み合わせた正門
 

広大な敷地内からは富士山も見渡せる


和菓子屋に寄り、店員の「天皇陛下も食べられました、このお菓子○○○は〜」という説明に群がるお客さん達。側にはまた富士山を眺められる散歩コースが。


 
 


その後は、今回最後の見学先「与勇輝館」へ。母の最大の目的地だったわけだが、実際、この美術館が一番印象的だった。子供を中心とした、与氏の人形が展示されているのだが、どれもこれも本当に可愛らしく、それにまるで生きているかのようである。しかも、きちんと立っている。これが不思議なのだが、「立たないのは人形ではない」のだそうだ。与氏が全ての人形に命と魂、そして愛情を注ぎ込んだ結晶だと思った。どの人形も自然な表情と、愛らしさが漂っていて、僕は圧倒され続けた。

そしてまたバスに乗り、新宿へ。2時間半の間、ビデオ上映もあったが、またもや僕はそのほとんどを寝て過ごした。しかも口を開けて・・・。でも今回は楽しかった。天気にも恵まれ、桜と富士山もとても綺麗に鑑賞が出来た。雨が降っていたらせっかくの機会が台無しになるところだった。そして美術館も思った以上に面白かったし、興味深かった。皆さんも、来年、機会があればこのツアーに参加してみては如何でしょうか?平均年齢60歳以上だと思われるが・・・。