第44話
「最悪のスキー旅行」

1月28日(土)、家族全員(夫婦、子供3人、僕)で、隣のノースカロライナ州に1泊2日でスキーに出かけた。正直言って僕は気が進まなかったが、断る理由もなく一緒に行くことになった。

当日の朝は例の如く、僕以外はドタバタの大騒ぎで準備していた。クリスマス・イヴの朝、僕が朝食を自分で食べなかったことでベリンダに叱られた苦い経験から、この日はワッフルを自分で焼いて食べた。すると、大忙しで準備をしていたベリンダが、食べている僕を見やり、冷たく言い放った。
「あらあなた、朝食は途中で買うのよ。あなたは要らないのね!」
クリスマス・イヴにあなたは何と言って、僕を叱りつけた?周りがどうであれ、自分で朝食を用意して食べなければ「私はあなたのメイドじゃない!自分の分は自分で作って食べなさい!」と激怒し、その言いつけを守れば守ったでコレだ。いい加減、ベリンダの感情論にはうんざりしていた。

傷心のままノースカロライナへ。晴天だった。コロラドのロッキー山脈の美しい雪と、スキーに適した山とは違い、ところどころデコボコで、更に傾斜も急で恐かった。しかも雪はザラザラ。コロラドではあんなに楽しめたスキー、今回は全く楽しめなかった。それに、トリーの子守もしなければならず、わがまま娘の面倒を山の中で見るのは並大抵ではなく、本当に帰りたい思いで一杯だった。

この日の夕食はイタリア料理を食べに行った。メニューを見ながら、何をしようか決めかねていた僕は、ベリンダに「これはどういう食べ物?」と訊いた。簡単に説明してくれた後で、「それは高いからダメよ」とピシャリ。僕はその日から、まずホストが食べるのを決めた後で、それより安いものを頼む習性を身に付けた。

翌日は雨が降った。途中晴れたが、それでも滑りに行った。朝、ベリンダに「お金持ってこなかったなんて信じられない」と言われた。何を言ってるんだろう。
「持ってきたよ」
「じゃあ、どうして昨日デニーにスキー代払わせたの?」
「それを言うなら、カメラ代で相殺されていない100ドル分はどうなってるの?」
「まず部屋代に60ドル払って・・・云々」
お金の話になってしまった。結局、ベリンダの勘違いだったことが判明し、スキー代や部屋代はカメラ代から相殺されることになった。どんぶり勘定のマイナス面だった。大事にはならなかったが、お金の問題は些細なことから始まる大喧嘩の元である。

アメリカ人は大抵、朝、出かける前にデオドランドをつける。僕も持っていたのだが、この旅行には忘れて持って来ていなかった。ベリンダも忘れたらしく、貸してと催促された。持って来ていないと言ったら、
「あら、じゃあ、あなた今日一日中臭いままなのね」
アメリカ人にとって、デオドランドをつけないということは、「臭い」ということを意味する。僕にそんな嫌味を言ってのけたベリンダさん、そんなあなたも「家に忘れてきた」のではないでしょうか。いかにも僕が悪いみたいな言い方でしたけど・・・。

車の中ではトレイの態度に僕はイラつき、やっとの思いで帰宅。荷物を全部デニーとベリンダの部屋に運んだら、ベリンダは「Shit!(クソ!)」と吐いた。
「ここに持って来ないでよ、洗うのに!」

まったく、最初から最後まで気分の悪い旅だった。

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