KO TAKAHASHI LIVE
STAR PINE'S CAFE
2004.3.21 (Sun)


SET LIST
1. 葉桜吹雪
2. 蜃気楼に雨が降る
  -MC-
3. 幸せの陽射し
4. 青春の風
5. Blue Touch
6. Fantasma
7. 風雲
8. 夕照に誘われて

ボーカル:高橋功/ピアノ:荒武裕一朗/ベース:高岡淳二/ドラム:林昌彦

今年2発目のライヴは、前回に引き続き吉祥寺STAR PINE'S CAFEにて。いつもスタパ公演は緊張するが、今回はまた事情が違った。この夏、結婚してベルギーに旅立って行く大学時代の同級生が、はるばる京都から来てくれたのだ。それに便乗して香川からも友人が駆けつけてくれた。きっとこういう事情も手伝ってか、僕は相当緊張していた。

今回のライヴはこれまでとは少し趣を変えてみた。まず、一貫したテーマの元でMCなしの構成。曲間のMCにおけるプツッとした途切れがないことによって、統一性を出してみようと思った。そして、テーマは「風」。風と言っても、広い意味を持つ。自分の現状を取り巻く風、心の中に吹く風、季節の風。また風に乗ってくるふとした匂いや音が、一瞬にして過去や遠い場所に心を運んでくれることもある。様々な風の流れを歌ってみようと思った。

まずは「葉桜吹雪」にて幻想的にスタート。風に吹かれたら、今にも倒れて息絶えてしまいそうな歌である。続く「蜃気楼に雨が降る」で幻想と現実が交錯する。辛い過去から立ち直り、新しい風を待つ。

一旦ここで予定外のMC。結婚する友人に、はなむけの歌を歌うことを話し、「幸せの陽射し」のイントロが流れる。優しいピアノの音色だ。その途端、ウッと泣きそうになった。歌い始めると、今にも泣いて歌えなくなってしまうのではないか、という思いにとらわれた。そして未だに止まらない緊張。足の震えも止まらない。この歌を歌うと決めた時から、僕はどういう気持ちでこの歌を歌えばいいのかを考えていた。この歌は、“確かな想い”を感じた男性側の気持ちを表している。第三者からの祝福の歌ではないので、友人の旦那さんとなる相手の気持ちで歌えばいいのかな、などと考えていた。だがしかし、歌い始めてみると、様々な想いが交差した。結婚までの経緯、様々な苦難を聞いて知っているだけに、ただ単に“良かったね、おめでとう”と言う気持ちよりももっと強いものがあった。そして、大学当時の友人も知っているし、沢山の話もした仲だ。いろんな想いがこみ上げてくる中、旦那さんや友人の気持ちを代弁しているかのような錯覚にとらわれた。

1番を歌い終わり、間奏に入ると、僕はステージの上から左側に見えた友人に背を向けた。視界に入ったらもう泣いて歌えない、そう思ったのだ。そして同時に、感情を入れずに歌おうと思った。泣いて歌が止まることだけは避けたかったのだ。だが、間奏が終わってすぐ、

♪言葉にすれば壊れそうな 淡い恋とは違う
 君に出会えて 泣きたいくらい 僕は幸せと思う

このフレーズはこの歌のカギとなる部分であるが故に、1番よりも更に感情が入ってしまった。歌うのが精一杯だった。この部分はもう一度繰り返すので、本当に精一杯だったのだ。

次の曲「青春の風」は、文字通り、青春(学生)時代に吹かれた風を思い出しながら歌う。ここでひとまず、ひとつの流れが終わる。

続く「Blue Touch」は、悲恋の歌、いわば逆風である。どこまでも続くかのように見える辛い気持ち。キリッとした曲調から続き、「Fantasma」と「風雲」は異国の風を運ぶ。南国を舞台に、ひとときの情熱を求めるが、その後に待っているものは空しさ。ラテン調の激しい歌。「風雲」は一転してオリエンタルな曲調である。アジアの大地に吹く風をイメージしている。幸せと不幸せの悲しい背中合わせがテーマだ。いい風も吹けば、悪い風も吹く。

ラストは定番「夕照に誘われて」。この歌をラストに持ってきたのは1年以上振りである。故に、とても新鮮な気持ちで歌えた。心が熱くなるほどの過去を夕陽に例え、その眩しさに手をかざしてみるも、あの時間があったからこそ、今こうして生きていけるという感謝の歌。悲しい「風雲」から、優しくも切ない「夕照に誘われて」でステージは終了。

最初から最後まで緊張しっぱなしだったが、これもバネに、次からのライヴに活かしていこうと思っている。感情移入、集中、伝える力など、今回のステージで得た収穫は大きかったように思う。